脳卒中後遺症による痛み・しびれ緩和 自宅リハビリのポイント
脳卒中後遺症における痛みとしびれについて
脳卒中を発症された方の多くが、運動麻痺や言語障害といった症状だけでなく、痛みやしび感といった感覚の変化に悩まされることがあります。これらの症状は、日常生活動作やリハビリへの取り組みに影響を与える場合があり、適切な対処が求められます。
痛みやしびれの原因は、脳卒中の種類や障害された部位、程度によって様々です。例えば、筋肉が硬くなる痙縮(けいしゅく)による痛み、関節の動きが悪くなることによる痛み、感覚を司る脳の部位の障害による神経障害性疼痛などが考えられます。また、不適切な姿勢や体の使い方が原因となることもあります。
この記事では、脳卒中後遺症による痛みやしびれに対し、ご自宅でできるリハビリやセルフケアの具体的な方法と、実践する上でのポイントをご紹介します。
自宅でできる痛み・しびれ緩和のためのリハビリケア
自宅でのケアは、専門家によるリハビリテーションと並行して行うことで、より効果が期待できます。痛みの原因や程度に応じて、以下のような方法を試すことが考えられます。ただし、これらの方法は一般的なものであり、ご自身の症状に適しているか、また安全に行えるかは、必ず専門の医師や理学療法士、作業療法士にご相談ください。
1. 関節可動域訓練・ストレッチ
硬くなった筋肉や関節は痛みの原因となることがあります。痛みを感じない範囲で、ゆっくりと関節を動かしたり、筋肉を伸ばしたりする訓練を行います。
- 方法: 麻痺側の手足の指、手首、肘、肩、股関節、膝、足首などを、反対側の手で支えながらゆっくりと動かします。筋肉を伸ばす際は、痛みを感じる手前で止め、約20秒から30秒程度キープします。呼吸を止めずに行います。
- ポイント: 無理な力で行うと症状が悪化する可能性があります。特に痙縮が強い場合は、無理に伸ばさず、専門家から指導を受けた方法で行うことが重要です。
2. セルフマッサージ・ gentle touch
筋肉の血行不良や張りが痛みの原因となっている場合に有効なことがあります。
- 方法: 筋肉が硬くなっている部分や、冷えを感じる部分を、指の腹や手のひらを使って優しくさすったり、軽く揉んだりします。強く押すのではなく、心地よいと感じる程度の優しい刺激で行います。
- ポイント: 皮膚を傷つけないように、滑りを良くするためにクリームやオイルを使用することも有効です。ただし、皮膚に感覚障害がある場合は、やけどや傷に気づきにくいことがあるため注意が必要です。
3. 適切なポジショニング(姿勢の調整)
寝ている時や座っている時の姿勢が、痛みやしびれに関係していることがあります。
- 方法: クッションや枕などを活用し、麻痺した手足がベッドや椅子にしっかりと支えられ、無理のない楽な位置になるように調整します。関節が曲がりすぎたり、伸びきったまま長時間放置されたりしないように注意します。
- ポイント: 長時間同じ姿勢を続けないように、こまめに体位変換や姿勢の調整を行います。夜間の寝ている間に痛みが強くなる場合は、寝具や寝る姿勢を見直すことが有効な場合があります。
4. 温熱療法・寒冷療法
温めたり冷やしたりすることで、痛みやしびれが緩和されることがあります。
- 温熱療法: 慢性的な痛みや筋肉の張りに対しては、温めることが有効な場合があります。温湿布、ホットパック、お風呂で温めるなどが考えられます。血行を促進し、筋肉をリラックスさせる効果が期待できます。
- 寒冷療法: 炎症が疑われる痛みや、急な痛み、腫れがある場合は、冷やすことが有効な場合があります。冷湿布、アイスパックなどが考えられます。
- ポイント: ご自身の痛みが温めるべきか冷やすべきかは、原因によって異なります。感覚障害がある場合は、やけどや凍傷のリスクがあるため、温度に注意し、短時間で行うようにします。どちらを選択すべきか迷う場合は専門家にご相談ください。
5. 日常生活での体の使い方や工夫
痛みを悪化させないためには、日常生活動作での体の使い方も重要です。
- 方法: 重いものを持ったり、無理な姿勢で長時間作業したりすることは避けます。麻痺していない側の手足を上手に使いながら、患側への負担を減らすような動作を工夫します。例えば、立ち上がる際や座る際に、壁や手すりを利用するなどです。
- ポイント: 動作中に痛みやしびれが強くなる場合は、その動作を見直す必要があります。必要に応じて、福祉用具や自助具の活用も検討します。
自宅での痛み・しびれケアを行う上での大切なポイント
- 専門家への相談: 痛みやしびれの原因は自己判断が難しい場合があります。必ず専門医の診断を受け、理学療法士や作業療法士からご自身に適したケア方法や注意点について指導を受けてください。
- 無理は禁物: 痛みを感じるリハビリやケアは逆効果となることがあります。痛みがない範囲、または痛みが悪化しない範囲で行うことが最も重要です。
- 継続すること: 効果を実感するには、毎日続けることが大切です。短時間でも良いので、習慣として取り入れることを目指しましょう。
- 記録をつける: どのような時に、どのような場所で、どのような痛みやしびれを感じるのか、またどのようなケアで楽になるのかなどを記録しておくと、症状の変化を把握しやすく、専門家への相談時にも役立ちます。
- 症状の変化に注意: 新しい痛みが出たり、既存の痛みやしびれが悪化したり、他の症状(腫れ、赤み、熱など)を伴う場合は、速やかに医療機関を受診してください。
まとめ
脳卒中後遺症による痛みやしびれは、多くの方が経験する症状ですが、適切な自宅でのケアによって緩和することが期待できます。ご紹介したストレッチ、マッサージ、ポジショニング、温熱・寒冷療法、体の使い方などの工夫は、リハビリ効果を高め、日常生活の質を向上させるために有効です。
これらのケアは、必ず専門家の指導のもと、ご自身の体調や症状に合わせて安全に行ってください。痛みやしびれとうまく付き合いながら、自宅でのリハビリを継続し、より快適で活動的な生活を目指しましょう。