脳卒中後遺症 記憶と遂行機能の自宅リハビリ 具体的な訓練メニュー
脳卒中後遺症による記憶・遂行機能障害への自宅リハビリ
脳卒中の後遺症として、体の麻痺だけでなく、記憶や段取りを立てるのが難しくなる「高次脳機能障害」が生じることがあります。特に、記憶障害や遂行機能障害は、日常生活や仕事への復帰において大きな課題となることがあります。
この記事では、脳卒中後遺症による記憶障害や遂行機能障害に対し、ご自宅で取り組める具体的なリハビリ訓練メニューと、効果を高めるためのポイントをご紹介いたします。
※この記事で提供する情報は一般的な自宅リハビリの例です。個々の症状や状態に合わせたリハビリは、必ず医師や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門家にご相談の上、指導を受けてから行うようにしてください。
記憶障害と遂行機能障害とは
自宅でのリハビリを始める前に、それぞれの機能がどのようなものか簡単に確認します。
- 記憶障害: 新しいことを覚えられなくなったり、以前の出来事を思い出せなくなったりする症状です。直前のことや数日前のことが思い出せない、約束を忘れてしまうなどの形で現れることがあります。
- 遂行機能障害: 目標を設定し、計画を立て、実行し、結果を評価するという一連の行為が難しくなる症状です。複数の作業を同時に行う、優先順位をつける、計画通りに進める、問題が起きた時に柔軟に対応するといったことが困難になることがあります。
これらの機能は、仕事や家事、趣味など、日々の生活を円滑に進める上で非常に重要です。
自宅で取り組む記憶・遂行機能のリハビリの意義
自宅でのリハビリは、病院や施設でのリハビリに加えて行うことで、効果の定着や生活への応用を促す上で有効です。特に、ご自身の生活環境の中で訓練を行うことは、学んだスキルを実際の状況で使いこなす練習になります。
時間が限られている場合でも、短い時間で区切って集中的に取り組むなど、工夫次第で生活の中にリハビリの時間を取り入れることが可能です。
具体的な自宅リハビリ訓練メニュー
ここでは、記憶機能と遂行機能それぞれに対する具体的な訓練メニューの例をいくつかご紹介します。
記憶機能の自宅訓練メニュー例
- 日記や記録をつける:
- その日行ったこと、感じたこと、考えたことなどを記録します。簡単なメモ程度でも構いません。
- 今日あった出来事を思い出しながら書くことで、記憶の定着を促します。後で見返すことで、自分の行動や出来事を確認する手助けになります。
- 物の置き場所を決める:
- 鍵、財布、携帯電話など、よく使う物の置き場所を固定します。
- 「これはここに置く」というルールを決め、必ずその場所に戻す習慣をつけることで、探し物をする手間を減らし、記憶への負担を軽減します。
- リストを作成・活用する:
- 買い物リスト、To Doリスト、やることリストなどを作成します。
- リストを見ながら行動することで、忘れることを防ぎ、計画通りに進める手助けになります。完了した項目にチェックを入れるのも有効です。
- 音読や要約練習:
- 新聞記事や本の短い文章などを音読し、内容を自分の言葉で要約します。
- 文章の内容を理解し、それを記憶して整理する練習になります。
- 簡単な記憶ゲームや脳トレアプリの活用:
- 絵合わせ、数字記憶、神経衰弱などのゲームや、記憶力向上を目的としたスマートフォンアプリなどを活用します。
- ゲーム感覚で楽しみながら、記憶力のトレーニングを行うことができます。ただし、アプリの使いすぎには注意し、適度な時間で行いましょう。
遂行機能の自宅訓練メニュー例
- 簡単なタスクの計画・実行練習:
- 簡単な料理を作る、洗濯をする、近所へ買い物に行くなど、具体的なタスクを選びます。
- タスクを完了するために必要なステップ(材料を準備する、手順を書き出す、必要な時間を考えるなど)を書き出し、計画を立ててから実行します。計画通りに進んだか、難しかった点は何かなどを振り返ることも重要です。
- 時間管理の練習:
- タイマーを使って、それぞれの作業にかかる時間を測ってみます。
- 「この作業は〇分で終わらせる」と時間を意識して取り組むことで、時間配分や段取りの感覚を養います。
- チェックリストの作成と活用:
- 朝の準備、外出前の確認など、日々のルーティン作業に必要な項目をチェックリストにします。
- リストを上から順に確認しながら行動することで、抜け漏れを防ぎ、作業をスムーズに進めることができます。
- 環境整理:
- 机の上や引き出しの中など、身の回りを整理整頓します。
- 物がどこにあるか分かりやすい状態にすることで、作業効率が上がり、段取りが立てやすくなります。
- 問題解決練習:
- 日常生活で起こりうる簡単な問題(例: 予定していた電車に乗り遅れた場合どうするか)について、複数の解決策を考え、それぞれのメリット・デメリットを比較検討する練習をします。
- 柔軟な思考力や対応力を養います。パズルや論理クイズなども有効です。
自宅リハビリの効果を高めるポイント
- 目標を明確にする: 「〇週間後に簡単な料理が一人で作れるようになる」「毎日日記をつける習慣をつける」など、具体的で達成可能な小さな目標を設定すると、モチベーションを維持しやすくなります。
- 集中できる環境を作る: テレビやスマートフォンの通知など、気が散るものを避け、静かで落ち着ける場所で訓練に取り組みましょう。
- 休憩を挟む: 疲れすぎると集中力が低下し、効果が薄れることがあります。適度に休憩を取りながら行いましょう。
- 訓練の記録をつける: どんな訓練をどれくらいの時間行ったか、難しかった点、できたことなどを記録します。自分の進歩を把握でき、リハビリ計画の見直しにも役立ちます。
- ご家族の協力を得る: ご家族に訓練内容を理解してもらい、見守りや声かけ、記録の手伝いなどをしてもらうと、より効果的に取り組める場合があります。
- 専門家に相談する: 自宅での取り組みだけで改善が見られない場合や、症状が悪化したと感じる場合は、必ず専門家にご相談ください。より個人に合った具体的なアドバイスや、必要に応じて専門的なリハビリを受けることができます。
まとめ
脳卒中後遺症による記憶障害や遂行機能障害は、日々の生活に影響を及ぼすことがありますが、適切なリハビリを継続することで改善が期待できます。この記事でご紹介した自宅リハビリメニューは、日々の生活の中で手軽に取り入れられるものばかりです。
ご自身のペースで、できることから一つずつ取り組んでみてください。そして、決して一人で抱え込まず、困った時は専門家やご家族に相談することが大切です。「疾患別自宅リハnavi」では、これからも皆さまの自宅リハビリの一助となるような情報を提供してまいります。