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脳卒中後遺症 着替え動作改善のための自宅リハビリ

Tags: 脳卒中, 自宅リハビリ, 着替え, ADL, 動作訓練

脳卒中後遺症による着替えの困難さと自宅リハビリの重要性

脳卒中により、体の片側に麻痺や感覚障害などが生じると、日常生活の基本動作である着替えが難しくなることがあります。ボタンを留める、ファスナーを上げる、袖に腕を通すといった、以前は無意識に行っていた動作に時間がかかったり、介助が必要になったりすることは、多くの方が直面する課題です。

着替えの困難さは、単に時間がかかるというだけでなく、自立性の低下や自信の喪失にもつながりかねません。しかし、適切な自宅リハビリを継続することで、着替えに必要な体の機能や動作手順を再学習し、改善を目指すことは十分に可能です。

この記事では、脳卒中後遺症により着替えに困難を抱える方が、ご自宅で取り組める具体的なリハビリ方法や工夫についてご紹介します。専門家によるリハビリと並行して行うことで、より効果的な回復が期待できます。

なぜ着替えが難しくなるのか:原因の理解

着替え動作には、様々な体の機能が複合的に関わっています。脳卒中の後遺症がこれらの機能に影響を与えることで、着替えが難しくなります。主な原因としては以下が挙げられます。

これらの原因が一つ、または複数組み合わさることで、着替えの動作は複雑なものとなります。自宅リハビリでは、これらの根本的な機能障害と、実際の動作練習の両面からアプローチすることが重要です。

着替え動作に必要な機能と自宅で鍛えるポイント

着替えをスムーズに行うためには、以下の機能が特に重要になります。それぞれの機能を自宅でどのように鍛えるか、具体的なポイントをご紹介します。

1. 上肢のリーチと操作性

服を手に取ったり、袖に腕を通したり、ボタンやファスナーを操作したりするために必要な機能です。

2. 体幹の安定性とバランス

立ったり座ったりしながら着替える際に、体を支えたり、不安定な姿勢でもバランスを保ったりするために重要です。

3. 動作手順の理解と実行(高次脳機能への配慮)

着替えの順番を理解し、スムーズに実行するためには、認知機能への配慮が必要です。

具体的な着替え動作のリハビリと工夫

基本的な機能練習に加えて、実際に服を使った動作練習も重要です。症状に合わせて、やり方を工夫します。

上半身の着替え(Tシャツやシャツなど)

下半身の着替え(ズボンやスカートなど)

短時間でできる着替えリハビリメニュー例(5分)

時間が限られている場合でも、以下のメニューを組み合わせて行うことで、着替えに必要な機能の維持・向上を目指せます。

  1. 座位リーチ練習: 椅子に座り、テーブルの上のペンなどを麻痺側の手で取る練習(1分)
  2. ボタン・ファスナー練習: 使わないシャツでボタン2〜3個の開け閉め練習(2分)
  3. 座位体幹安定練習: 椅子に座り、両手を離して良い姿勢を保つ練習(1分)
  4. ズボンやシャツをたぐり寄せる練習: 実際に服の一部をたぐり寄せる手の練習(1分)

これらのメニューを、朝の着替え前や夜寝る前など、決まった時間に行うことを習慣化すると良いでしょう。

自宅で使える便利な機器・グッズ

着替えをサポートする様々な自助具や工夫された衣類があります。これらを活用することで、自立した着替えに近づくことができます。

これらの機器・グッズの選び方や使い方は、インターネットや福祉用具店などで情報収集できますが、可能であればリハビリ専門家や福祉用具専門相談員に相談することをお勧めします。

まとめ:継続と工夫が自宅リハビリ成功の鍵

脳卒中後遺症による着替えの困難は、適切なアプローチによって改善が見込めます。この記事でご紹介した自宅リハビリメニューは一例であり、ご自身の症状や体の状態に合わせて、内容や強度を調整することが重要です。

最も大切なのは、諦めずに継続すること、そして、専門家の指導に基づきながら、日々の生活の中で楽しみながらリハビリに取り組む姿勢です。今回ご紹介した内容が、皆さまの着替え動作の改善と、より自立した生活を送るための一助となれば幸いです。

自宅リハビリは、あくまで医療機関で行う専門的なリハビリを補完するものです。リハビリ方法や体の状態について不安がある場合は、必ず医師や理学療法士、作業療法士にご相談ください。