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脳卒中後遺症 バランス機能向上のための自宅リハビリメニュー

Tags: 脳卒中, 自宅リハビリ, バランス訓練, 後遺症, リハビリテーション

はじめに

脳卒中の後遺症により、バランス能力に課題を感じている方は少なくありません。バランス機能の低下は、立ち上がりや歩行の不安定さにつながり、日常生活での転倒リスクを高める可能性があります。自宅でのリハビリにおいてバランス訓練を取り入れることは、活動範囲の拡大や転倒予防のために非常に重要です。

このページでは、脳卒中後遺症をお持ちの方が自宅で安全に取り組める、バランス機能向上のためのリハビリメニューをご紹介します。ご自身の体の状態に合わせ、無理のない範囲で継続して取り組むことが大切です。

バランス機能とは

バランス機能は、体の重心を支持基底面(立っている面など、体を支えている範囲)の中に保つ能力です。この機能は、複数の感覚情報(視覚、体性感覚、前庭覚など)と、それらを統合して適切な筋肉を働かせる運動機能によって成り立っています。

脳卒中によりこれらの機能の一部が障害されると、バランスが不安定になりやすくなります。自宅でのバランス訓練は、残された機能を最大限に活用し、バランスを保つための体の使い方を再学習することを目的とします。

自宅でできるバランス訓練の基本原則

自宅でバランス訓練を行う際には、以下の点を心がけましょう。

バランス機能向上のための自宅リハビリメニュー

ここでは、いくつかのバランス訓練メニューを難易度別に紹介します。ご自身の体の状態に合わせて選択してください。

レベル1:座ってできるバランス訓練

主に体幹の安定性を高め、座った姿勢でのバランス感覚を養います。

  1. 座位での重心移動:

    • 安定した椅子に深く腰掛け、足の裏を床につけます。
    • 背筋を軽く伸ばし、体を左右、前後、円を描くようにゆっくりと傾けます。
    • 体幹を意識し、倒れないようにコントロールします。
    • 各方向へ5回ずつ程度行います。
    • 慣れてきたら、目を閉じて行ってみるのも良いでしょう(安全に注意)。
  2. 座位での片足上げ:

    • 椅子に座ったまま、片方の足を軽く床から浮かせます。
    • 座った姿勢が崩れないように、体幹で安定を保ちます。
    • 数秒キープし、ゆっくりと足を下ろします。左右交互に5回ずつ程度行います。
    • 足を高く上げる必要はありません。座った姿勢が安定することが目的です。

レベル2:立ってできる基本的なバランス訓練

安定した場所(壁や手すりの近く)で行います。

  1. 立位での重心移動:

    • 壁や手すりの近くに立ち、必要であれば軽く支えます。
    • 足を肩幅程度に開いて立ちます。
    • 体を左右、前後へゆっくりと傾け、片方の足や前足に重心を移動させます。
    • 倒れないように、足の裏全体で床を感じながら行います。
    • 各方向へ5回ずつ程度行います。
  2. 閉脚立位(足を閉じて立つ):

    • 壁や手すりの近くに立ち、足を閉じて揃えます。
    • 壁や手すりにいつでも掴まれるようにしつつ、可能な範囲で支えなしで立ちます。
    • まずは10秒キープを目指し、慣れてきたら時間を伸ばしていきます。
    • 不安な場合は、壁に手をついたまま行うことから始めます。

レベル3:少し不安定な中でのバランス訓練

レベル1、2に慣れてきたら挑戦します。安全確保を徹底してください。

  1. タンデムスタンス(継ぎ足立位):

    • 壁や手すりの近くに立ち、片方の足のつま先をもう片方の足のかかとの前につけて、縦一列に足を並べて立ちます。
    • 可能な範囲で支えなしで、数秒キープします。
    • 左右の足を入れ替えて行います。
    • 短い時間から始め、徐々に時間を伸ばします。不安な場合は、壁に手をついて行うか、足を完全に閉じずに少し隙間を開けることから始めます。
  2. 片足立ち:

    • 壁や手すりの近くに立ち、片方の足を床から少し浮かせます。
    • 上げた足は軽く曲げ、バランスを崩さないように立ちます。
    • 最初は数秒キープから始め、徐々に時間を伸ばします(例:5秒、10秒)。
    • 壁や手すりにいつでも掴まれるように、安全に注意して行います。
    • 左右交互に行います。

症状や進行度によるバリエーションの考え方

自宅でのバランス訓練に役立つ機器・グッズ

自宅でのバランス訓練をサポートする様々な機器やグッズがあります。

安全のための注意点

まとめ

脳卒中後遺症によるバランス機能の課題に対し、自宅での継続的なリハビリは非常に有効です。ご紹介したメニューは一例ですが、ご自身の体の状態や目標に合わせて、無理のない範囲で日々の生活に取り入れてみてください。

自宅リハビリはあくまで専門的なリハビリテーションを補完するものです。現在の体の状態や、どの訓練が最適かについては、必ず医師や理学療法士などの専門家にご相談ください。専門家の指導のもと、安全に効果的な自宅リハビリを進めていきましょう。継続は力です。少しずつでも良いので、毎日取り組み、より安定した日常生活を目指してください。